真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

わかりやすくQ&A回向【めぐり巡った先には?】

Q1回向には、どんな意味があるのでしょうか?
 回向のもともとの意味は「菩提に回向すること」で、回転趣向を略したものです。趣向を廻らすということで、廻向とも書きます。自分が積み上げた善根(良い行い)が他にめぐらされて、それが転じて及ぶことを言います。
 2000年以上前のインドにおける仏教では、回向は主に父母兄弟や親族血縁に及ぶことが説かれましたが、後に大乗仏教の菩薩思想が広まると、回向の及ぶところ一切衆生に施さなければならないと強調されるようになりました。
 自分が良い行いをくり返し積み上げること(善根功徳)で、一切衆生(生きとし生けるもの)と自分の悟りのために施し与えることが回向となるのです。亡き人の仏事を行って読経や写経、ご詠歌などを行うことも同じなのです。
Q2回向は何のために行われるのですか?
 廻向には3種あると説かれます。自分が行う一切の善法(善い行い、修行)を廻らして悟りを求める「菩提回向」と、自分が行う善法を他に与えようとする「衆生回向」と、自分が行う善法を廻らして、一切の執着や煩悩を滅して、普く一切にその功徳が及ぶことを求める「実際回向」があります。
 また、廻向には施者(施す者)と施物(お供え物)と受者(施される者)の三者があり、この三つはそれぞれが清らかなので三輪清浄と呼ばれ、本来は空(とらわれのない世界)なのです。施者は我欲・我執を離れて、大悲心を常に心がけ、誠意をもって廻向するものなのです。
Q3普回向の精神とは?
 いま、ここで積んだ功徳(行為とそれを支える心持ち)を、この世界の隅から隅にまですべてに及ぼして、自分と生きとし生けるものすべて、共に仏の道を成就することを願わずには居れない。それが普回向の精神です。今ここで、この身で感じたこと、感激、心持ちを自分一人で満足することなしに、自分からその周りへ、さらに自分から外へ外へとそのベクトル(波)を拡げてゆく。それが仏教の一番大切な教え(姿勢)と言えるのです。
 例えば「法事やお墓参りなどの仏事を行って、その時に感じた心境(悟りの境地=仏と成った心地)を大いなる慈悲心として、それを携えて、一切衆生に接し、施しなさい。」というのが普回向なのです。仏の加持力と自分の功徳力、そして、この仏の世界にある法界力によって、供養はそこかしこに及ぶのです。

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