真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

わかりやすくQ&A真言宗の教えって、なに?【10:心を見つめる教え】

Q1心は安らかになるの?
 仏教は、ずっと人の心を見つめ、心とは何かを考えてきた宗教です。そして、むさぼりや怒りや無知を抱く心が、静まり、安らかになることを理想とします。仏教を開かれたお釈迦さまは、瞑想によって悟りを得ました。苦の原因を見つめて、それが煩悩や執着によって引き起こされると理解し、苦を取り除けば安らかなる心が訪れる。つまり苦を取り除く具体的な実践法を示しました。そして、仏教は、安らかなる心を持つ、その理想的な存在として仏さまを現わしたのです。ですから仏さまは安らかなる心をいつも抱いています。
 しかし、悟りの境地である安らかなる心を得るのは容易なことではありません。お釈迦さまのようには出来ない。そんなお釈迦さまに対する畏敬の念が、後の仏教徒(信者)とお釈迦さまの距離をどんどん遠くしました。安らかなる心は普通の修行じゃ得られない。お釈迦さまと同じ境地に成るなんておこがましい……仏に成るには気が遠くなるほどの時間を要するといつか思い込むのです。
Q2仏さまの心(境地)に成るには?
 この身のまま、すぐに成仏できるという可能性を説く教えが、真言宗の教えです。弘法大師空海は『即身成仏義』をはじめとする著作で、この身のまま成仏できると説きます。そして真言宗の根本経典『大日経』には「如実知自心」という教えが説かれています。つまり、実の如く自心を知る。「ありのままの自分の心を知る」ということです。それは「いかにして自分の心を見つめるか」ということでもあります。
 自分の心が、いまどうなっているのか? それを見つめられないと、理想とする仏さまの安らかなる心には近づきません。自身と向き合い、自らの心をそのままに見つめられるなら、仏さまの境地に向かうことができるわけです。
Q3心を見つめるにはどうすればいい?
 お釈迦さまのように瞑想をしてみましょう。この数年来、ヨガ・ブームが続いていますね。ヨガの元の意味は「結びつける、つなげる」ということだそうです。心と身体、または身体と感覚とをつなげる。目に見える身体と見えない心を結びつける。お釈迦さまは瞑想によって自身の心を見つめ、心がなぜ苦しむのかを見極めたのです。
 そうした瞑想の中で、真言宗にはシンプルな瞑想法として月輪観(がちりんかん)と阿字観(あじかん)というものがあります。自らの心を月に見立て、月を観じて無限の宇宙をイメージするのが月輪観。大日如来(阿字)の境地と自分の心を一つにして、如来が放つ光を観じる瞑想が阿字観です。無限の心を実感し、永遠の光を体感する真言宗の瞑想法は、安らかなる心をきっと、あなた自身にもたらします。

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