真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

真言宗の教えって、なに?【7:真言宗の浄土とは?】

Q1浄土ってどんな意味なのかな?
 浄土のイメージって皆さんはどんなものですか? 極楽浄土とか西方浄土の言葉は耳にしたことがありますか? 極楽の反対の言葉は地獄。浄土の反対は穢土(えど)と言います。清浄な土地による世界が浄土、穢れた土による世界を穢土(えど)と名付けました。平安時代の終わりに末法思想が流行します。お釈迦さまの教えが絶えて、この世が天変地異や飢饉などで終わりを迎えようとする。そんな穢れた世の中(土地)を離れて、清浄な世界(土地)であるあの世、つまり仏さまの世界へ生まれ変わりたい。それが浄土往生思想です。
 源信が著した『往生要集』には「欣求(ごんぐ)浄土・厭離(おんり)穢土」と表現されています。この当時は「生まれ死に、死に生まれる」という輪廻の考えが常識の時代でしたから、死んで阿弥陀さまの浄土に生まれ変わりたいと願う人が大勢いたようです。
Q2浄土はあるの?どこにあるの?
 こんなに科学技術が栄え、情報化社会の今日では、浄土が実際に存在するなんて考えないでしょう。科学的根拠のないものを存在するとは思えません。しかし仏教を信仰し、宗教的情緒にあふれる人ならば、ものの見方は少し変わります。仏教が2500年前にインドで起こり、シルクロードを伝ってアジアのそこかしこに弘まる最中、仏教は仏さまの住む世界をイメージ豊かに生み出しました。
 例えば、西のはるか彼方には阿弥陀さまの住まう極楽浄土が、正反対の東には瑠璃色のまばゆい光に包まれる薬師如来の浄土があると経典に説かれます。さらに南方の補陀落という山には観音菩薩の浄土があると信じられてきました。仏教を信じる者には仏さまの世界、浄土へ往生したい。仏さまの下で安楽に暮らしたいと強く願いました。
Q3真言宗の浄土はどんなところなの?
 西方極楽浄土は浄土宗や浄土真宗の信仰する阿弥陀如来の世界です。浄土宗のお寺のご本尊さまはどこも阿弥陀如来なのです。それに対して天台宗や真言宗は観音菩薩や不動明王、大日如来など様々なご本尊さまをお祀りします。特に真言宗は大日如来を教主としています。この大日如来が迷える私たち衆生の悩みや苦しみに応じで、その人が最も親しみやすい仏さまにお姿を変え、つまり変身して現れます。ですから真言宗のお寺は、その土地にご縁のある仏さまがご本尊さまにお祀りされ、その地に住む人々の心の支えとなってきたのです。
 そして、大日如来が住する方角は東西南北のどこにもありません。今皆さんが生きている、暮らすその場所で、あなたが仏に成りたいと念じ、精進すれば、そのままその場所が浄土となるのです。大日如来の浄土を密厳浄土と言います。密かで厳かな浄土。それは大日如来を信じる者にしか観じられない世界です。

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