真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

マザー・テレサ


  マザー・テレサが帰らぬ人となったのは、平成9年の9月5日。87歳でこの世を去りました。もう7年の歳月が流れ、それでも、彼女の言葉と行為は、私たちの記憶の中に強烈に残っています。情報があふれて、現実感や等身大の自分を見失いつつある私たちに、これからの私たちの未来までも見透かしたような言の葉が、その口からいくつも解き放たれました。そこに込められた心を私たちは自分のこととして受け止めているのでしょうか?宗教・国境を超えて、マザー・テレサの愛は、いまも、数え切れない多くの人々の支えとなっています。

  「私はすべての人の中に神を見つけることができます。ハンセン病患者のけがを洗う時、私は神を看病していると感じます。美しい経験ではないですか。」「人間にとって最も大切なのは人間としての尊厳を持つことです。パンがなくて飢えるよりも、心や愛の飢えのほうが重病です。豊かな日本にも貧しい人はいると思いますが、それに気づいていない人もいるでしょう。」こうした言葉には現実をしっかり見つめようという勇気と厳しいまなざしが感じられます。

  だからこそ、1979年にノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサには、それまでに受賞した誰より、多くの人々から、心の込められた祝福が寄せられたことでしょう。時間に追われ、表面的な現象のみに一喜一憂して、曖昧に過ごしてしまうことが良くあります。望むものの多くは、何でも手に入る時代。自分の手を汚さずにすむ世の中で、たったひとつだけでも、心が込められた愛を実感していますか? 心を込めたことを、何かしていますか?

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