真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

竹久夢二


 私たちは、ふだんの生活の中で、忘れていいものにいつまでも固執したり、忘れてはいけないものを、ないがしろにしてしまうことがあります。むしろ、「忘れずにいたい」「忘れてしまいたい」という思いが、強ければ強いほど、なかなか思いどおりにならないものです。
 しかし、その前に、自分の中で「忘れてよいもの」と「忘れちゃいけないもの」との区別がはっきりしていない、きちんと心の中が整理されていないことが、そもそもの原因となっている気がします。
 取っておいても仕方がないもの、忘れられないもの、いつも使わないけど、いざとなると、なかなか捨てられずにいるものって多いですよね。よくよく考えてみれば、毎日、いろいろな情報や真新しいものが、あふれんばかりに私たちの身のまわりに入ってきます。だからこそ、自分にとって、本当に大切なもの、かけがえのないものだけを残して、その他は忘れていく勇気が必要だという想いを強く抱きます。
 だって、自分の宝箱に入るものは、限りがあますから……ね。

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