仏のことば
三、十善戒(じゅうぜんかい)その1
 この十善戒は仏教における最も基本となる戒です。戒とは仏を信じる者にとって生活をする心構えを約束する誓いです。しばしば戒律といいますが、「律」は先ほど述べたように教団の生活規則です。それに対して「戒」は個人の誓いなのです。

 十善戒は十善業道ともいわれ、仏教徒が最も心がけるべき十種の善業です。先に十悪業を紹介しましたが、十善戒(十善業道)はその悪業を行わない正しい生活ということになります。仏教を信じる者の生活規範として十善戒を授かります。ただし真言密教の信心をそなえるためには、さらに後に述べる三昧耶戒を受けることになります。

 弟子某甲(でしむこう) 尽未来際(じんみらいさい) 不殺生(ふせっしょう) 不偸盗(ふちゅうとう) 不邪淫(ふじゃいん) 不妄語(ふもうご) 不綺語(ふきご) 不悪口(ふあっく) 不両舌(ふりょうぜつ) 不慳貪(ふけんどん) 不瞋恚(ふしんに) 不邪見(ふじゃけん)

 最初に「弟子某甲 尽未来際」とありますが、これは「仏の弟子である私は果てしない未来までも」という意味で、永遠の誓いをするということです。誓うのは次の十の善業です。

 [1]不殺生:むやみに生きものを傷つけたり殺したりしない
 [2]不偸盗:他人の財物を盗まない
 [3]不邪淫:みだらな男女関係などの乱れた性生活はしない
 [4]不妄語:うそ偽りは言わない
 [5]不綺語:無意味で飾りたてる言葉、でまかせの言葉を話さない
 [6]不悪口:他人を悩ませるような粗野な言葉遣いをしない
 [7]不両舌:他人を非難したり仲をさくような言葉遣いをしない
 [8]不慳貪:持ち物を惜しんで他人には与えず、自分だけ物を欲しがることはしない
 [9]不瞋恚:怒りや憎しみの心をいだかない
 [10]不邪見:仏が教える因果の道理を信じ、間違った考えをしない

 すべての善業は悪業を行わないという形になっています。戒とは基本的に悪業を避けるという誓いを立てることが多いのです。
つづく
>> バックナンバー