真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

わかりやすくQ&A仏教って何だろう?【2:苦とは、なにか?】

Q1人はなぜ、苦しむの?
 皆さんが、元気のままでいること、若さを保てること、ずっと楽しめることは、誰も保証できません。その一方で、痛むこと、病気になること、老いること、死ぬことは、誰にも保障されています。誰も避けることはできません。人間とはそういうものです。
 生きることは苦であるとお釈迦さまは説きました。有名な「諸行無常 一切皆苦」の言葉は、この世の中に在るもの、起こること、すべては常に移り変わってゆく。だからすべては苦であるという意味です。人には愛するもの、かけがいのないものが必ずあります。その大切なものが、自分の思いどおりにいつまでも存在してほしいと願います。しかし、すべてのものは必ず移り変わります。どんなに想いを込めても、自分の思いどおりになりません。だから苦しむのです。
Q2どんな苦しみがあるの?
 人は大切なものに思い入れをすればするほど、執着が強くります。欲望が物事への執着を生み、苦を引き起こすのです。その欲望は渇愛によってもたらされます。渇愛とは、喉が渇いて激しく水を欲しがる様子を言います。皆さんも喉がカラカラに渇いたり、お腹がペコペコになると、つらく苦しくなりますよね。人は、愛に渇くと自分でもどうにもならない衝動に突き動かされて、ついには苦しくなるのです。
 仏教では「四苦」というように苦しみを生・老・病・死の4つに分けます。生まれる苦しみ、老いる苦しみ、病む苦しみ、死ぬ苦しみです。この四苦に、さらに四つの苦を加えると「四苦八苦」と言います。愛するものと別れる苦しみ(愛別離苦(あいべつりく))、怨み憎む人と会う苦しみ(怨憎会苦(おんぞうえく))、求められるものを得られない苦しみ(求不得苦(ぐふとっく))、自分をかたちづくる心と身体が思いどおりにならない苦しみ(五取蘊苦(ごしゅうんく))、この4つを加えて四苦八苦となります。
Q3生きることは苦しみばかりなの?
 「生きることは苦しみばかり」なんて聞くと、お釈迦さまの教えは何かしんどそうだ……なんて感じを持ってしまいますか?でも、それは表面的なイメージにすぎません。このお釈迦さまの教えは逆転の発想です。苦しむ原因をしっかりと見極めて、その原因がなぜ起こるのか?苦はどうすればとりのぞけるか?苦を取り除いたらどうなるのか?そんなふうに考えました。実はものすごいプラス思考なのです。私たちの病気もそうでしょう。病気の原因を探して、どうすれば治せるのかを考えるのと同じです。
 お釈迦さまは、苦の原因は人間の欲望と執着にあると突き止めて、その根っこには渇愛という衝動があると見抜いたのです。そして、この原因によって引き起こされる苦を除けば、安らかで静かな心地がもたらされると説きました。

わかりやすくQ&A一覧