真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

風信(かぜのたより)No.39

 願うことが、あなたにはありますか? 祈りたいことがありますか? 私たちは、今は亡き人のご冥福を祈り、今いのちあるものの願いが叶うよう祈ります。自分と家族、そして関わりのあるものの無事を祈り、自分を支えてくれる生きとし生けるものに感謝します。お家のお仏壇の前で、菩提寺のご本尊さまの前で、一日の無事を祈り、一日の無事に感謝します。
祈る心と感謝の念。ささやかですがこの毎日の積み重ねが、感性を鋭くして豊かな心を育むのです。
 私たちが生きてゆく先には、思いどおりにならないことがいくつもあります。心が惑うとか、苦しむことが多いですよね。自分一人ではなかなか思うようにならない。それが募ると、救いがあっても目に入らずに、どうにもならない自身のいのちを断ってしまいます。でもそれは、いのちを粗末にして死を選ぶわけではありません。
生きていることが苦しい、誰も助けてくれないと思い込んで、かけがえのない生命を殺めてしまう。日本でこの10 年の間、年間2 万人を越える生命が自らの手で失われています。


 救いの手が必ずあることをあなたは知っていますか? 苦しみ悩み、どうにもならないことにぶつかった時、救いの術がある。救いの道があることを知って欲しいのです。自分を支えてくれる、助けてくれる存在が必ずあることを、つい忘れていませんか?
 それでは救いの道はどこにあるのでしょう? それはもう、あなたのすぐそばにあります。あなたとご縁のある菩提寺、仏の教えを受け継いできたお寺は、檀信徒がご本尊さまと出会い、さまざまなご縁を結ぶ空間です。だって、仏教は「くじけない」「あきらめない」「投げ出さない」教え。人の可能性をどこまでも信じきる教えです。そしてお寺に来ると悩みやさびしい思いを消し去ることができる活動があなたを待っています。


 人の心を支えるもの……それこそがお寺です。この土地で暮らす人をずっとずっと昔から見守り、支えてきた由緒正しいもの、それが吉祥院のご本尊・毘沙門天です。そして、その毘沙門さまの下で迷える人をすくい取るために、吉祥院ではいくつもの行事や活動を今も続けています。ご詠歌や写経・写仏、真言宗の瞑想・阿字観、巡礼や遍路、さらに季節ごとの行事、彼岸会法要や大施餓鬼会、たいけん道場や子供会。そのすべてが、あなたの悩みや苦しみを和らげ、心をおだやかで安らかにします。
 毘沙門さまの下に集まる人たちの心をつなぎ、絆を結びます。もちろん、亡くなった人への供養の気持ちも、そうしたつながりの中から満たされるのです。さらに、先の東日本大震災で亡くなられた方や、今も暮らしに苦しんでいる人たちのご冥福を祈り、無事を祈ること。それもこうした行事を通じて、できることのひとつなのです。お寺はいつでもその地で暮らす人を支え、心を安らかにする空間です。いつでも訪れてみて下さい。境内に足を踏み入れると、ホッと心が落ち着いてゆきます。
 

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