風信(かぜのたより)No.20
オウム真理教の事件から十数年が過ぎて、それからさまざまな新興宗教に多くの迷える人たちが足を踏み入れたり、家族の中で殺人や虐待があったり、そんな話題が毎日のように流れてきます。教育や道徳が荒廃したからとか、常識が薄れてきたとか言われていますが、いま、いったい何が起っているのでしょう? そして、その原因はどこにあるのでしょう?

お年寄りが自分の経験によって身につけたことを子供たちに伝える。長い歳月の中で培われた「生きる知恵」は、家族がみんなで自分らしく生きてゆくための支えとなり、よりどころとなっていたのでしょう。そして、その中でいちばん大切なものが、みなさんの家の宗教でしょう。毎日、お仏壇に手を合わせてご先祖さまのご冥福を祈り、また、ご先祖さまに家族みんなの幸せを祈り、感謝する。自分の内にある魂が、ご先祖さまから受け継がれてきたこと、いのちが脈々とつながってきたことを実感する。それは、人のいのちと人との絆の大切さを身に染みることにもなるのです。
お仏壇に向かって、目には見えないご先祖さまに手を合わせる。お仏壇の中央に祀られている仏さま(真言宗は大日如来)に願いを祈る。確かに、非科学的な行為かも知れません。でも、私たち日本人は、この行為をず~っと毎日繰り返して、無事であることを祈り、無事であったことに感謝してきました。お仏壇は、仏さまの大いなる力にすがって祈り、ご先祖さまに、いのちある自分を感謝する空間です。祈りと感謝の心、目には見えなくても、手には触れられなくても、魂と魂が触れ合う空間がお仏壇です。私たちに大切なもの、それは心や魂を感じて、その魂が触れ合うこと。そのことさえ、しっかりと身につけておけば、きっと大丈夫です。そんなふうに家の宗教を伝えてゆく、魂のつながりを受け継いでゆく、そのためにも、お年寄りから小さなお子さんまで、みんなで、お仏壇に手を合わせましょう。
