真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

風信(かぜのたより)No.8

 言いたいことを言う。自分の主張を押し通そうとする。最近、そんな風潮を強く感じませんか? 相手の事情や、言われた相手の気持ちを思いやれない発言が、世間に蔓延(まんえん)していないでしょうか? かつてのニューヨークでの同時多発テロ、アメリカのアフガニスタンやイラクへの進攻、その後の各国の反政府デモ・暴動、各国の紛争など、日本でも企業や銀行の不祥事や不良債権の処理をめぐって、そして東日本大震災の復興でも、当事者の発言はいつも、自分たちの都合で正当性を主張しているだけに思えます。
 そんな世の中の様子を他人事のように、気楽に語っているばかりでは、どうも、すまないような気がします。私たちの周りではどうでしょう? 家族や友だち、職場やその他の人間関係の中で、自分の思いを押し通そうとしてみたり、思ったことをそのまま口にして、あなたのまわりの思いに気づかないことはありませんか? そればかりか、自分の思い通りにならないと、イライラしたり、不機嫌な態度を取ってしまうことはありませんか?

 相手の目を見つめる、相手の話をよ~く聞く、相手が、何を思っているのかを知ろうとする。そういう思いを、いつも心に留め置いているでしょうか? あなたのすぐそばにいる人、目の前の相手、大切でかけがえのない人の心をきちんと受け止めていますか? その声を聞き逃すまいと、注意を払っていますか? その人の何気ない変化に気づこうとしていますか? 一緒に暮らしている人が、いつも、当たり前のことをしていると思い込んでいませんか?
 よく聴く耳を持ちましょう! どんなに無口な人も、とっつきにくい人も、何かをしたい思いや考え、感じていることはあるはずです。忙しく、あわただしい毎日であっても、そういうことは、脇に退けておいても、じっくりと話す時間、相手の話を聴くひとときを持ちましょう。慣れ親しんだ人であればこそ、また、普段からじっくり話す機会が持てない相手とも、コミュニケーションをはかれるように時間をつくりましょう。まず、自分が話すのではなく、相手の考えや思いや感じたままを語ってもらう。それを、じっくりと耳を傾け聴いてみましょう。自分のことはそれからでもいいでしょう。相手を知って、理解を深めてから、自分を語った方が、お互いの距離もギャップも良く見えてくるのではないでしょうか?

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