真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

風信(かぜのたより)No.4

 「らしさ」ってどういうことでしょう? 男らしい、女らしい、人間らしく、自分らしく……誰かにそう言われたことがありますか。そうすると、不思議と何だかそうしなくちゃあいけないような気がしてくる。まるで呪縛にでもかかったようにね。「らしさ」というのは、何か理想とするイメージがあって、それに向かって頑張らなければならない……。そんな強迫観念を抱いてしまいますよね。「今は本当の自分じゃない、変わらなくちゃいけない。」なんて、息が詰まりそうになってくる。でも、そんなことを気にするよりも、ちょっと、違った見方をしてみませんか?

 今あるいのちを生かしきる、自分の持っている力(能力)を出し惜しみすることなく使い切る。幾つになっても自分の可能性に賭けてみる。そう考えると、心の持ちようが変わってきませんか? あわただしい、ゆとりのない毎日。浅い眠り、肩で息をして、背中を丸めて、すぐ目の前のことしか見えていない。そんな自分の姿に、毎日、鏡をのぞき込んで、気づきませんか? 風の流れる音、草花の香り、日差しのあたたかさ、そして、人の心の温もりを感じていますか? 受け止めようとしていますか?
 思いっきり身体を伸ばして、凛とした姿勢で、深く息を吸い込んで呼吸し、風や雨の音に耳を澄まし、五感(身体のすべての感覚)を鋭くして、自然の恵みを一心に受け止める。私たちの身体は、それが出来るように産み落とされ、育まれているのです。後は、自分がその能力を最大限に活かしきれるかどうかでしょう。体力も知力も、感覚も精神力も、そして、心も……親から連なり、おじいちゃんおばあちゃん、ご先祖さまへと脈々と受け継がれている生きる力を、埋もれさせて無駄にしたままでいいのですか?

 あなたの生きる力を最大限に引き出す手段のひとつが、瞑想という身体と心のトレーニングです。静かに流れる音楽とかぐわしい香りに満ちた空間で、縮こまった身体を伸ばすストレッチをして、正しい姿勢で座り、ゆっくりと深い呼吸を心がけます。これだけでも気分が楽になります。そして、自分の心をまんまるいお月さまと感じて、心の中のイメージを大きく膨らませてゆきます。最後には無限大の宇宙を感じる……それが真言宗の禅(瞑想)です。自分の可能性、生きる力を育むひとときを、あなたも体感してみませんか?

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