風信(かぜのたより)No.50
呼吸は、私たち人間にとって何よりも大切なものです。いろんなものが積み重なって気が重くなる。いざ勝負という時になると心拍数が上がり呼吸が早くなる。だから緊張を和らげるために深呼吸する。少しでもリラックスして、平静な自分を取り戻そうとする。そんなふうに息を抜きたくなる日常が続いてゆきます。 いのちとは何でしょう?いのちとはもともと「息の霊」という意味だそうです。霊が息をするから、いのちがある。霊(魂)がやって来て体中に極まる、それがいのちなのです。呼吸することはいのちを息づかせること。私たちは普段、無意識に呼吸しています。もちろん、呼吸しなければ人は生きていられません。生きるために呼吸します。逆に言えば、呼吸するから生きていられる。いのちを維持できる。そして、私たちは息をして酸素を体内に取り入れ、体中の細胞を活性化させているのです。
つまり呼吸を深くすることで、私たちは気持ちが落ち着き、身体の感覚(五感)が鋭くなります。心が安らかになって、物事をしっかり見つめたり、見極められるようになります。仏教を弘めたお釈迦さまも、正しい姿勢で座り、呼吸を深くして瞑想をくり返した末に、悟りの境地に至りました。情報があふれる時代、息苦しくなるこの時にこそ、呼吸を深くしてリズムを整えて、涼やかなる季節に自身を見つめ直したいものです。