風信(かぜのたより)No.64
人は誰もが「悪いことをしてはいけない」「人に迷惑をかけてはいけない」と思い、時には自らに言い聞かせます。ウォルト・ディズニーの名作「ピノキオ」は、人間の欲望と戒(いまし)めを主人公ピノキオと良心の象徴とされるジミニー(コオロギ)とのやり取りを描きます。もうただ率直に「あれがしたい」「これが欲しい」と好き勝手を言うピノキオとそれに寄り添って戒めるコウロギのジミニ―。でもピノキオは欲望のおもむくままに行動して、最後には大切でかけがえのないものを失ってしまいます。 欲望や執着を抑えるために仏教では十善戒を説きます。ちょっと堅苦しく感じるかも知れませんが、そんなことはありません。人が人として生きる、自分らしい生き方をするために必要な教え、別の言い方をすれば十の善き教えです。この十善戒、十の善き教えをやさしく説いてみましょう。
①生き物を傷つけたり殺さない【不殺生】
②他人や自然のものを盗まない【不偸盗】
③誤った性生活はしない【不邪淫】
④嘘や偽りは言わない【不妄語】
⑤言葉をかざらない【不綺語】
⑥他人の悪口を言わない【不悪口】
⑦二枚舌を使わない【不両舌】
⑧物惜しみしない【不慳貪】
⑨怒らない【不瞋恚】
⑩物事を正しく見る【不邪見】 ひとつずつ心がけてみる。「十の教えを初めから全部やり切ろう!」そんなに意気込まなくても大丈夫です。一日に一つだけ心にかけてやってみる。それで十分です。出来たらまたひとつ心がけてみる。ポイントカードを貯めるように、あなた自身が心がけるのです。私たちの内にわいてくる煩悩や執着、欲望を薄めてゆくために心がけるのです。十の善き教えを積み重ねると、心が少しずつ安らかになってゆきます。そして、安らかな心を求めるとあなたの中に生きる力が感じられます。それは仏さまの境地、つまりあなたは仏さまに成れるということ。仏に成る道が十善戒なのです。