真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

仏のことばを読む六. 般若心経   その3

②持戒波羅蜜多(じかいはらみった)
 持戒とは戒を保つことをいいます。最も基本となる戒は先にお唱えした十善戒です。これは在家の人も等しく保つべき心の誓いです。僧侶になるとさらに多くの戒が授けられます。また真言密教の信心をいただく場合には、三昧耶戒(さんまやかい)が授けられます。これらの戒についてはすでに述べたとおりです。
 ところで、戒は他人に強制されて守る約束ではありません。自分の意志で仏や教団の仲間の前で誓うことで成り立ちます。それに対して律は教団での生活の約束ごとで、仲間で決めたことを守る義務があります。戒律と一般に言いますが、仏教では戒と律は異なる内容となります。
 さて戒は自分で心に誓うことですが、誓う内容を師から授けてもらいます。そして師の前で戒をよく保つことを誓います。そして誓った戒を守り、日々の生活をすることで心が清々しくなります。心の清々しさ、爽やかさを保つのが戒のある生活です。それゆえに戒を清涼(しょうりょう)と形容します。
 インドでは古代より身体に特殊なお香を塗って暑さをしのぐ習慣がありました。このお香を塗った爽やかさが戒を保つ心の清涼さに比されます。その習慣が伝わり、僧侶は法要などで仏の前に出る時は、必ず身体にお香を塗る儀式を行います。そこで使用する粉末のお香は、塗香(ずこう)といわれ、とても香りがよいのが特徴です。これも戒が清涼であることを確認させてくれます。
 しかし、戒を保つ生活を心がけていても、私たちは意思が弱く、ついつい戒を破ってしまいます。戒を破った自分を反省し、日々新たな気持ちで戒のある生活をするために懺悔(ざんげ)が必要です。懺悔をし、戒を保つよう心がけ、誓いを大切にすることが仏教徒として生きる基本になります。

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