真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

仏のことばを読む六. 般若心経   その11

 照見とは観自在菩薩【観(み)ることに自在である菩薩】の「観」の働きです。先に観自在菩薩の働きはダルマ【法】を詳細に観察することに優れていることを述べました。このダルマ(法)の観察こそ、『般若心経』の前半部分の中心テーマです。したがってダルマ(法)とは何かが了解されていないとこの経典は理解できません。
しかし、ダルマ(法)についての理論は複雑でなかなか簡単にまとめることはできません。ところがこのダルマ(法)について学ぶことが、伝統教団においては基礎学問とされていました。そのような学問は性相学(しょうぞうがく)といわれ、奈良時代には法相宗(ほっそうしゅう)と倶舎宗(くしゃしゅう)と称し、奈良の興福寺や元興寺、そして法隆寺などで盛んに学ばれました。そこでは宗派を超えて多くの僧侶が性相学を研鑽(けんさん)しました。しかし、この学問は次第に各宗派でも盛んになり、真言宗智山派においても江戸時代には盛んに研究され、京都にある総本山智積院(ちしゃくいん)もこの性相学という学問も学べる有力な寺院となり、学山(がくさん)【学問寺院】として全国から僧侶が集まる場所になりました。
 さて、ここでいうダルマ【法】とは「維持するもの」という意味です。社会を維持する道徳や法律も古代インドではダルマ【法】と考えていました。しかし、厳しく心を見つめることを教えた釈尊は、ダルマ【法】を私たちが生きるあり方を維持するさまざまな要素として示しました。次に説かれる五蘊もダルマ【法】の分類として代表的なものです。
 

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