真言宗智山派吉祥院珍珠山

仏教コラム

仏のことばを読む六. 般若心経   その7

⑥般若波羅蜜多
 以上の修行の具体的実践に支えられて、智慧の完成という般若波羅蜜多を得ることができるのです。般若波羅蜜多は五つの波羅蜜多を包括(ほうかつ)したものといえます。般若を働かせる実践にとって、先の五つは欠かすことができない修行の要件なのです。般若波羅蜜多を含めた六波羅蜜多は大乗仏教の修行の原型となりました。そして六波羅蜜多のうち、般若波羅蜜多を強調し、般若という修行における智慧によって、すべてのものが言葉により虚構されており、言葉通りの実体は存在しないという真実を見抜くことを目指すのが般若経の特徴です。そのような般若経は大乗仏教の初期の頃から数百年の間にわたって、般若波羅蜜多を経典の題に冠した経典が制作され続けました。
 それらのさまざまな般若経典は、ある程度、成立時期が想定できますが、『般若心経』はそれさえもよく分かりません。しかも私たちが読誦する『般若心経』は『西遊記』の三蔵法師として有名な玄奘三蔵【602~664】が漢訳したと伝えられますが、そのことさえ確実ではないのです。
 

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