仏のことばを読む六. 般若心経 その19
無眼界乃至無意識界のうち、乃至というのは途中を省略して列挙することを示し、「~からか~まで」という意味です。ここでは眼識界・耳識界・鼻識界・舌識界・身識界・意識界を示しています。界は領域あるいは要素を意味します。ここでいう眼は眼識のことです。眼識から意識までを六識(ろくしき)といいます。それらが感覚や認識の要素となっているので界というのです。また先に述べた十二処も感覚・知覚・認識の要素なので、ここでの六識界と合わせて総称して十八界(じゅうはっかい)という場合もあります。この十二処あるいは十八界も、釈尊が人間をどのように見るかということで示された重要な教えとして伝えられてきました。
ここでいう眼は眼識界ということですが、眼識の識とは「知る」という意味で、対象を得て自己の内に取り込む働きです。したがって眼識とは眼根によってその対象である色境【視覚対象】を取り込む働きです。すなわち根-境と結びついて、感覚や認識が成立すると考えられています。それらのうち眼識【視覚】から身識【触覚】までは感覚なので、まとめて前五識といい、第六番目の意識は意根によって法境【観念】を認識する働きです。これらの六識もすべてダルマ【法】として釈尊によって説かれたのです。よって五蘊と同じように、これら眼識界から意識界までのダルマ【法】も「空である状態」なのですから実在しません。それゆえ無と説かれるのです。
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